卒業研究『野球選手に対するヘモグロビン値改善のための栄養マネジメントの実施』【管理栄養士専攻】

管理栄養士専攻(現:管理栄養学科)4年生で行う卒業研究
その中で「野球選手に対するヘモグロビン値改善のための栄養マネジメントの実施」について研究した学生さんにお話を聞きました。

「野球選手に対するヘモグロビン値改善のための栄養マネジメントの実施」

【背景・目的】
近年、スポーツにおいて栄養という分野が注目され始め、食事を重要視する選手が増え始めた。その中でジュニア期は、アスリートとして活動する期間であると同時に、成長のスパート期でもある。そこで問題となるのが「スポーツ貧血」である。今回、選手のパフォーマンス向上を目指し、ヘモグロビン値の改善を目的とした栄養マネジメントの実施を行った。

 

【方法・結果】
野球チームに所属している男子中学生約30名のヘモグロビン値を測定。13.0 g/dlを下回った選手5名を対象に食事調査。調査をもとに貧血改善のレシピ集を作成、スポーツと栄養についてのパワーポイントを作成し、選手及び保護者に対して講義を行った。
結果として、対象者5名のうち4名のヘモグロビン値の改善がみられた。また、食事調査から各栄養素の摂取量の増加と共に、食事内容の改善をすることができた。
アンケート結果からは、各対象者全てで選手及び保護者の食事意識の向上、体力及び身体能力など運動時のパフォーマンスの向上がみられた。

Q.研究の中で苦労したことは?

A.選手のおおよその食事摂取量を把握するために、写真法による3日分(平日、休日及び試合日、ナイター練習日)の食事調査を行ったのですが、写真から栄養価を計算するのは大変でした。
例えば、写真から卵1つ分使用していると予想し、1つ分は何gで栄養価は・・・といったように食事の写真から計算していきます。朝昼晩の3食分で3日間あるため、1枚1枚を調査していくのは時間がかかりました。
その食事調査をもとに、足りていない栄養素を補うレシピ集を作成しました。

Q.レシピ集について教えてください。

A.栄養素ごとに約10ページのレシピ集で、保護者の方へ個人的にアドバイスもさせていただきました。
また、計測会の時に、苦手なものや食べられないものを事前に聞き取り調査してからレシピ作成に取り組みました。
牛乳が苦手な対象者には、カレーに牛乳と水を半分ずつ混ぜて加えたり、別のカルシウムがとれる食材に置き換えたりしています。
保護者の方に「食べたよ!」と嬉しい報告をいただいたときは、やりがいを感じました。
レシピ集を作るにあたっては、チームの専属管理栄養士の方に細かい点までアドバイスをいただき、とても感謝しています。

特にエネルギー不足が気になった対象者には、1回の食事量は少なくても回数を増やすこと、3食では補えない栄養素のために補食を摂ることなどを勧めました。
糖質は体を動かすために必要なエネルギー源なので、不足すると貧血の原因にもなります。
中学生のため、食べられる量には限界がありますし、食事回数を増やすことで糖質摂取量増加をめざしました。



▲卒業研究発表会にて。発表後は先生からの質疑応答。

Q.研究をしていて嬉しかったことは?

A.やっぱり1番は結果が出せたことです。
数値が良くなったこともですが、コーチの方から「対象者は全体的にパフォーマンスが向上した」と言っていただきました。
選手からも「翌日の疲労感が軽減した」と食事改善の効果を実感してもらいました。
私も学生の頃の運動部時代には貧血で悩んだ経験があります。その時自分では何も出来ず悔しかった思い出がありますが、栄養の知識を身につけた今、選手たちの手助けが出来たことは嬉しいです。
保護者の方も、研究が終わってからもSNSで質問をいただくことがあり、食事について意識向上のお手伝いが出来たことを実感しています。もともとスポーツ栄養に興味があってゼミを選んだので、今回の卒業研究を終えて、スポーツ栄養の道をめざしたいという思いがより一層強くなりました。

 

他にも管理栄養士専攻の学生は下記のような卒業研究に取り組み、発表しました。

『在宅療養高齢者の現状と栄養補給法ならびに食形態の生命予後、入院リスクとの関連』

『腸内フローラと生活習慣の関係』

『糖質摂取量の違いが健常ラットのOGTTに及ぼす影響』

『24時間心拍数計測によるエネルギー消費量の推定~2種類のデバイスの比較~』

など