「ベーシックデザイン」で建築の楽しさを体験

衣・食・住といった生活に関わる分野を広く学ぶ家政学専攻。
2年生の「ベーシックデザイン」では、色や造形についての基礎を学んだり、生活の様々な場面で必要となってくる「デザイン」について考えます。

授業では毎回ユニークな課題に挑戦していますが、この日の授業は「建築教室」と題された、スペシャルバージョン。日本建築家協会(JIA)のみなさんに直接指導を受けながら、二週にわたって造形物を作成するという大変貴重な内容でした。

 

具体的には、約1.8mと0.9mの長さの角材を組み合わせて、グループで自由にオブジェを造形してみようというもの。構造的な美しさを追及するもよし、そこに生まれる空間で何か体験できるようなものにしてもよし、テーマはグループで自由に考えます。

 

建築家協会の方によれば、これまで小学生のみなさんに同じ取り組みをしてもらう機会があり、その発想の豊かさに驚いたそうです。


二週のうち一週目はまず、割り箸をつかって10分の1の模型を作成しました。

 

建築家協会の方々にはグループごとにアドバイザーとして1名ずつ付いていただきました。

 

演習や実習、体験といった機会の多い家政学専攻ですが、今回の授業ではいつにも増して学生達の楽しそうな様子が伝わってきました。
「どんどんアイデアが浮かんですごく楽しかった。」
「行き詰ってしまうこともありましたが、グループの誰かが何とかしてくれたり、建築家の方も作品が面白いと言ってくれて、本番がすごく楽しみになってきました。」


こちらは二週目に行われた本番の様子です。
学生達の自由な発想を尊重しながら一緒につくりあげていこうという建築家のみなさんのバックアップもあって、一週目の模型制作以上に活き活きと楽しんで制作していました。

  

  

各グループの作品はこちらです。

★同じ形のオブジェを2つ並べた結果、「影の形がおもしろい」と評価していただきました。作品を作り終えたあとは、2つのオブジェを上下に積んでみたり、グループで楽しんでいる姿がみられました。

 

★こちらの作品は、模型の段階から完成のイメージがはっきりしていて、本番でも予想通りにできたとのこと。これは建築的には重要なことだそうです。中に入ってくつろぐ空間も用意されていて、ユニークなアイデアが満載です。

 

★こちらの作品は、ステージをイメージしたそうです。ライブ好きなメンバーの想いが反映されています。細い三角錐のパーツやフラットルーフなど、建築的に応用性が高いと評価していただきました。

 

★こちらの作品のタイトルは「過疎と過密」。「違う2つのものがなんとなく調和しているところが、建築的にはまるで街並みのよう。」と評価していただきました。

 

このように、参加したすべての学生にとって大きな充実感を得られた今回の授業でしたが、先生方にとっても今回の試みは多くの発見があったワークショップだったとのこと。家政学専攻の丹羽先生によるコメントです。
「普段の授業内では手先の作業が中心になっているので、今回のワークショップで身体スケールの空間造形を経験させることができ、感謝しています。当初、学生たちがどこまで可能性を広げられるか不安でしたが、JIAの皆さんの助言もあって、割り箸を使ったスタディの中から、各班それぞれに異なったアプローチの方法を見出して行ったのには感心させられました。また、『空間』を作るという課題に対して、広がりを意識するばかりでなく、あえて狭い空間を選択することで自分たちの『居場所』を作るという発想をしたチームもあり面白いと感じました」


また今回の授業を担当していただいた、JIA 東海支部愛知地域会 副地域会長の西村和哉先生によるレポートをこちらからごらんいただくことができます。

西村先生は、9月23日(月祝)~9月28日(土)に開催される「けんちくかフェス」の中の、「天使の森プロジェクト」(23日)にて「トイレ」について考えるプログラムに参加されます。興味のある方はぜひご参加ください。

最後に、JIA東海支部愛知地域会 会長 吉元学様から、今回の講義に参加した学生向けてメッセージをいただきましたのでご紹介いたします。

「建築教育への協力活動」は全国の(公社)日本建築家協会の支部で行っています。
小中学生に対する活動が大半であり、大学生に対しては全国でも珍しいかもしれません。
目的は自ら空間を作ることによって建築の楽しさを知ってもらうことです。
建築は完成すると建築家の手から離れます。それからは使う人の手の内に入ります。
本当に大切なのはここからなのです。もっと一般の人に建築空間の楽しさや、建築で考えられていることを知ってもらいたいのです。また、チームで協働しながら目的に向かって考えていき、手を動かしていく訓練でもあります。
これからは住民参加のまちづくりが求められています。
民主主義の基本となる、みんなで議論し意見を集約し、物事を進めていく大事な訓練でもあるのです。
建築空間作りって面白いと思ってもらえたらうれしいです。

公益社団法人日本建築家協会東海支部愛知地域会
地域会長 吉元 学